「数字だけが並ぶ帳簿の時代は終わった」…取引所の準備金証明競争はどこまで進んだのか
概要
- INFCLは、国内の暗号資産取引所で起きた誤送金事案後、準備金証明(Proof of Reserves, PoR)と内部統制の水準を再点検すべきだと述べた。
- 報告書は、グローバル取引所がマークルツリー、ゼロ知識証明(zk-SNARK・zk-STARK)、独立監査などを活用してPoRを定期開示し、資産の透明性とカバレッジ比率をめぐる競争を加速させていると分析したと伝えた。
- INFCLは、投資家がPoR報告書の定期発行の有無、オンチェーンでの直接検証可能性、ゼロ知識証明の導入有無、内部統制の開示水準、グローバル規制認可の取得有無を重要な点検基準とすべきだと強調したと伝えた。
期間別予測トレンドレポート



国内の暗号資産取引所で起きた誤送金事案を受け、準備金証明(Proof of Reserves, PoR)体制と内部統制の水準を再点検すべきだとの分析が示された。
27日、INFCLは企画分析リポートで、最近発生したビットコインの誤送金事故を契機に、取引所の資産透明性をめぐる根本的な問いが再び浮上したと診断した。取引所が保有していると公表する資産が実在するのか、内部台帳に記録された数値がオンチェーン資産と一致するのかについて、検証を求める声が強まっているという。
INFCLは「今回の事件をきっかけに、内部台帳と実際のオンチェーン資産の間で乖離が生じ得ることが確認された」とし、「投資家の間で、資産保有状況を直接検証できる仕組みへの要求が拡大している」と述べた。
準備金証明、「信頼」から「検証」へ
報告書は準備金証明を、取引所がユーザー預かり資産を1対1の比率で実際に保有していることを技術的に立証する仕組みと定義した。2022年のFTX破綻以降、世界の取引所を中心に導入が広がり、資産透明性の基準が信頼から検証へと移行していると分析した。
現在、PoRの検証には大きく3つの方式が用いられている。
△マークルツリー(Merkle Tree):個々のユーザー残高を暗号化ハッシュ構造で結合し、ユーザーが自身の残高が全体集合に含まれているか確認できるようにする方式
△ゼロ知識証明(zk-SNARK, zk-STARK):具体的なデータを公開せずに資産保有の事実を数学的に証明する技術で、プライバシー保護と検証の完結性を同時に確保する方式
△独立監査(Independent Audit):外部の会計法人がオンチェーン資産とユーザー残高を照合し、報告書を発行する伝統的な検証方式
INFCLは「会計監査は事後的な性格が強い」とし、「リアルタイムに近い透明性を確保するには、オンチェーン基盤の検証体制を併走させる必要がある」と説明した。
グローバル取引所、透明性競争が加速
主要グローバル取引所の対応状況も比較した。
バイナンスは2022年11月にPoRを導入して以降、マークルツリー基盤の検証体制を構築し、zk-SNARKも追加適用した。2026年1月には算出方法論を改定し、自社の運用資産まで含める方式へと範囲を拡大した。これまでに38回目の報告書を発行しており、直近の基準で顧客のビットコイン保有量は約61.8万BTC、カバレッジ比率は100.06%だった。
クラーケンは2014年から独立会計法人による準備金監査を実施してきた。その後、マークルツリー基盤のユーザー検証機能を追加し、2025年12月時点でBTC、ETH、SOL、USDCなど主要資産について1対1の保有確認を受けた。四半期ごとに報告書を発行する点も特徴だ。
OKXは2022年11月のPoR導入とともにzk-STARKを適用した。zk-STARKは、別途の信頼初期値設定手続きが不要である点で技術的な差別化要因を持つ。毎月の定期報告書を発行し、現在40回目に達しており、BTC、ETH、USDTなど22種類以上の資産について総額277億米ドル規模のオンチェーン準備金を開示した。直近の報告書ではBTCの準備率は106%、ETHは103%だ。
一方、国内主要取引所は外部会計法人監査と、規制当局が求める最低準備金基準の充足を中心に運営されている。ただし、ユーザーがオンチェーンデータを通じて資産保有の有無を直接検証できる構造は、まだ限定的だ。
PoRを超えて内部統制へ
報告書は、PoRが「資産が存在するか」を検証する装置だとすれば、内部統制は「事故を予防できるか」に関する手続きだと強調した。最近の誤送金事故がシステム内部のエラーに起因した以上、準備金証明だけでは不十分だという説明だ。
INFCLは「準備金証明が資産の存在有無を立証する装置なら、内部統制は事故を事前に遮断する装置だ」とし、「2つの軸がともに機能してこそ、実質的な信頼回復が可能になる」と強調した。
グローバル取引所は運用リスク管理体制も強化している。バイナンスは自社セキュリティチームと保険基金SAFUを運用しており、クラーケンは規制環境に適合するコンプライアンス体制を強みとして掲げる。OKXは資金移動専用ワークフロー、内部台帳のリアルタイム照合、多段階のクロス部門承認、24時間リスクエンジン監視など、多層防御体制を運用している。
報告書は「国内取引所の場合、内部統制構造に関する公開情報が限られており、今回の事故を契機に関連開示の要請が拡大する可能性が指摘される」と見通した。
規制と自律のギャップ
世界各国は暗号資産規制を強化する方向で動いている。機関投資家水準の内部統制の義務化と、システム障害に対する責任強化が中核軸として挙げられる。韓国も暗号資産利用者保護法の後続立法を準備しているとされる。
報告書は「規制を待つ取引所と、規制に先んじる取引所の間で格差が広がっている」と分析した。方法論を自主的に改定した事例や、定期的なPoR開示を継続する事例を代表例として挙げた。
投資家による点検も重要だと強調した。PoR報告書の定期発行の有無、オンチェーンでの直接検証可能性、ゼロ知識証明の導入有無、内部統制体制の開示水準、グローバル規制認可の取得有無などが主要な判断基準として提示された。
INFCLは「暗号資産市場が成熟するほど、信頼の基準はブランド認知度ではなく技術的な検証可能性へと移行している」とし、準備金証明と内部統制の高度化が取引所競争力を左右する中核要素として定着しつつあると評価した。


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