概要
- 申鉉松氏は 金融安定、負債規模、世界の流動性 を重視しており、政策金利を先制的に引き上げることには慎重との見方が出ている。
- 米国の 政策金利、国内の 家計債務、ドル高・ウォン安 など外部環境が悪化した場合には、先手を打って 金利 を引き上げる可能性があると伝えた。
- 申氏は 住宅ローン、外貨流動性規制、非中核負債の管理 などマクロプルーデンス政策を通じ、先制対応に乗り出すとの観測が出ている。
期間別予測トレンドレポート


韓国銀行総裁候補の論文15本を分析
住宅ローン・外貨流動性規制など
金融健全性を重視、先手対応を志向
中央銀行の過度な透明性には警戒
韓国銀行「Kドットチャート」維持の有無に関心

申鉉松(シン・ヒョンソン)韓国銀行総裁候補は、景気後退と物価上昇が同時に進むスタグフレーション懸念が強まる局面で金融政策を担う。代表論文15本をみると、金融政策の運営では物価だけでなく、金融システムの負債規模や資金の流れ、世界の流動性もあわせて考慮すべきだと主張してきた。金融安定を何より重視する申氏は、市場が警戒するような先制的な利上げには慎重とみられる。
もっとも、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ路線に転じれば、韓国銀行も政策金利の引き上げを迫られる公算が大きい。家計債務の増加懸念が強まる場合も、タカ派色を強めそうだ。
◇ 韓国銀行と市場の対話のあり方
申氏は1998年の論文「自己実現的通貨攻撃モデルの唯一均衡」で、通貨危機はファンダメンタルズ(経済の基礎体力)だけでなく、市場参加者の相互期待や金融変数によって増幅しうることを示し、注目を集めた。この問題意識は、金融政策でも物価や成長だけでなく、市場の期待形成や金融変数をあわせてみるべきだという見方につながった。
2002年の論文「公共情報の社会的価値」では、中央銀行が情報を過度に開示すると、市場参加者が公的シグナルに過度に依存し、市場の偏りを強めかねないと指摘した。韓国銀行が今後、政策金利の経路をあらかじめ示すフォワードガイダンスに慎重になるとの見方につながっている。

ソウル大経済学部のチェ・ジェウォン教授は「フォワードガイダンスは、すでに金利が低い状況で物価を抑えなければならない中央銀行が使う苦肉の策だ」と語った。そのうえで、申氏について「フォワードガイダンスが金融市場に強すぎる影響を及ぼすと判断する可能性が高い」と指摘した。
一方、申氏は中央銀行の対話手法そのものは精緻に進化させる必要があると考えている。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が2026年2月に導入した「Kドットチャート」を拡充・発展させる可能性もある。
◇ マクロ経済を踏まえた金融安定
2008年の論文「金融仲介機関、金融安定、そして金融政策」を境に、申氏の関心は金融安定の手段へと移った。この論文では、利下げは単なる景気刺激にとどまらず、金融機関の負債拡大を促してシステミックリスクを高めるおそれがあると論じた。
2011年の論文「バーゼルIIIを超えるマクロプルーデンス政策」は、申氏の実質的な政策宣言文と受け止められている。金融安定の確保には資本規制だけでは不十分で、金融機関の融資や外貨調達など、システム全体を視野に入れたマクロプルーデンス政策が必要だとの問題意識を示した。
2018年の論文「なぜ銀行資本が金融政策に重要なのか」では、金融危機の早期シグナルとして非中核負債の重要性を強調した。申氏は「非中核負債が大きく増えるのは、リスクプレミアムが低下していることを示す指標だ」と分析した。銀行が預金ではなく市場性資金への依存を強めるほど、システムの脆弱性は高まるとも指摘した。
こうした研究の蓄積から、申氏は韓国の不動産融資や外貨流動性規制、非中核負債の管理に深い関心を示すとみられる。延世大のチェ・サンヨプ教授は「国際決済銀行(BIS)出身らしく、申氏は銀行部門と家計部門が過度に債務を積み上げてリスクを負う状況を警戒してきた」と述べた。そのうえで、申氏が強調する先制対応は単なる利上げではなく、負債を含むマクロ面で先に手を打つという意味だと説明した。
◇ 世界の流動性、「国内要因だけでは不十分」
中央銀行は世界の金融環境を積極的に政策判断に反映すべきだ――。この主張は、申氏の学術研究のなかでも最も独自性が高い分野とされる。政策金利の決定にあたり、国内の物価と成長率だけをみるのでは不十分で、とりわけ韓国のような開放経済では、世界のドル資金の流れや国境をまたぐ銀行信用まで視野に入れる必要があるという考え方だ。
先進国の低金利が新興国の信用膨張と資本流入を拡大させる仕組みを説明した2015年の論文「資本フローと金融政策のリスクテイク経路」は、国内景気だけをみて金利を決める中央銀行の限界を示した代表作だ。
申氏は「ドルは世界の資本市場でリスク許容度を示す中核指標だ」としたうえで、「銀行部門の資本フローを左右するうえで、世界的な要因は国内要因より大きく作用する」と分析した。
こうした研究歴を踏まえ、専門家は申氏が先制利上げに踏み切る場合、物価よりも米国の政策金利や為替相場、国際原油価格など外部要因の悪化が主因になるとみている。チェ教授は「ドル高・ウォン安で資金流出が強まり、高水準の家計債務が経済の重荷になるのを防ぐため、先手を打って利上げすることはあり得る」と語った。
チョン・ヨンヒョ/シム・ソンミ記者 hugh@hankyung.com

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