中東停戦に不透明感、ビットコイン乱高下 イーサ反発・XRPは持ち直し[イ・スヒョンのコインレーダー]
概要
- 中東の停戦を巡る不透明感に加え、米国のPCE物価指数とFRBの利下げ期待の後退が重しとなり、ビットコインは7万ドル台前半を守れるかが焦点だと伝えた。
- イーサリアムはネットテイカー出来高と先物未決済建玉の増加で買い圧力が戻るなか、1800~2000ドルの支持帯を維持できるかが重要だと伝えた。
- XRPとソラナはそれぞれETF資金の流入・流出、アップグレード延期とセキュリティフレームワーク導入が重なり、機関資金の流れと投資家心理が先行きを左右する変数だと伝えた。
期間別予測トレンドレポート



「イ・スヒョンのコインレーダー」は、1週間の暗号資産市場の流れを点検し、その背景を読み解くコーナーだ。単なる相場の列挙にとどまらず、世界経済の材料や投資家動向を立体的に分析し、市場の方向感を見極める手がかりを提供する。
主要コイン
- ビットコイン(BTC)

ビットコインは今週、米国とイランの停戦合意が伝わって反発したものの、なお不安定な値動きが続いている。6月8日に停戦の報道が流れると一時7万2000ドルを上回ったが、1日もたたないうちに上げを吐き出し、7万ドル台前半まで押し戻される場面があった。ただ、前夜に反発し、6月10日午前時点ではコインマーケットキャップベースで7万1000ドル前後で推移している。
停戦直後に市場が長く安堵できなかった背景には、合意の実効性への疑念がある。6月8日の停戦発表直後も、イスラエルはレバノンのヒズボラを狙った攻撃を続けた。今回の合意は全面的な終戦ではなく、交渉に向けた「一時的措置」にすぎないとの認識が広がった。同日のニューヨーク株式市場は取引序盤に軟調となり、暗号資産市場も同じ流れをたどった。

ドナルド・トランプ米大統領の強硬発言も重荷になった。トランプ氏は6月9日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、合意が完全に履行されるまでイラン周辺に米軍戦力を維持すると明らかにした。合意が崩れた場合には、即座に、しかも一段と強力な軍事行動に踏み切ると警告した。市場は「停戦」という言葉そのものより、合意がいつでも揺らぎうる不安定さを強く織り込んだ。
前夜には、イスラエル側から交渉期待を刺激する発言も出た。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は6月10日、レバノン側が継続的に直接交渉を求めてきた点を踏まえ、できるだけ早く交渉に着手するよう内閣に指示したと述べた。市場はひとまず安心感を強め、ビットコインも一時7万3000ドルを回復した。もっとも同日、ネタニヤフ首相はイスラエル北部の住民に対し、レバノンとの停戦はなく、強い力でヒズボラへの攻撃を続けているとも語った。交渉期待と軍事的緊張が併存する矛盾した状況が続き、市場はこれを全面的な緩和シグナルとは受け止めなかった。

マクロ環境もビットコインの重荷となった。米商務省が6月9日に公表した2月の個人消費支出(PCE)物価指数は前月比0.4%上昇と、市場予想に沿った。ただ、同じ伸び率が直近3カ月続いている点が問題視された。米連邦準備理事会(FRB)にとっては、月次で0.2%程度まで下がって初めて物価安定の流れと解釈しやすい。現状はその2倍の伸びが続いている計算になる。前年同月比でも2.8%上昇と、なお高水準だ。しかも今回の数値は、米国とイランの衝突が本格化する前の状況までしか反映していない。今後、中東リスクが物価に上乗せされれば、インフレが再加速する可能性もある。
こうした流れは利下げ期待の後退に直結する。FRBが最も重視する物価指標であるPCEの鈍化が想定ほど進まなければ、緩和的な金融政策への転換も遅れる公算が大きい。ビットコインにとっては、流動性への期待が後退する構図だ。
先行きをみるうえでは、7万ドル台前半を守れるかが重要な分岐点になる。21シェアーズ(21Shares)のアナリスト、マット・メナ氏は、上昇基調が本格化する前にビットコインが6万9000~7万ドルを改めて試す可能性があるとみる。停戦が維持されず膠着状態が続けば、6万6000ドルまで下げ余地が広がるとの見方だ。一方、ニュースBTCのアナリスト、アユシュ・ジンダル氏は、ビットコインが最近7万1500ドルを一時上抜いた後、7万2728ドル近辺で短期の高値を付けて調整していると指摘した。そのうえで、なお7万200ドル超を維持しており、短期的な上昇構造そのものは有効だと評価した。ビットコインが7万ドル台前半を維持できるかどうかが、その後の戻りの持続性を左右しそうだ。
- イーサリアム(ETH)

イーサリアムはこの1週間で5%超反発し、2200ドル近辺まで上昇した。6月10日午前時点でも、コインマーケットキャップで2180ドル前後で取引されている。
今回の反発で注目されるのは、オンチェーン指標とデリバティブ指標がそろって改善した点だ。まず目立つのは、デリバティブ市場におけるイーサリアムのネットテイカー出来高である。この指標は、積極的に買い向かう勢力と売る勢力のどちらが優勢かを示す。CryptoQuantのデータによると、イーサリアムはこの指標が3月6日以降、プラス圏を維持している。3月16日には1億4000万ドルまで拡大し、足元でも1億400万ドル規模の買い圧力が優勢な状態にある。
CryptoQuantの寄稿者ダークフォストは、足元のイーサリアム市場では買い圧力が優勢だと指摘した。とりわけ今回の流れについて、前回の弱気相場以降で初めて見られる体制転換だと分析した。単なる短期のテクニカル反発ではなく、デリバティブ市場参加者のセンチメントが徐々に変化している可能性を示している。

未決済建玉も増えている。イーサリアム先物の未決済建玉は現在640万ETH規模で、昨年10月に500万ETHまで落ち込んだ時期と比べると大きく回復した。2025年7月に記録した過去最高の780万ETHにも再び近づいている。先物市場への参加が戻りつつあることを意味し、市場がイーサリアムを再び積極的に見始めたシグナルとも読める。
もっとも、構造が完全に変わったと断じるのは尚早だ。市場では1800~2000ドルを重要な防衛ラインとみている。この水準は20日指数平滑移動平均線と対称三角形の下限が重なる水準でもある。暗号資産アナリストのテッド・ピローズ氏も、2000ドルの支持線が維持される限り、イーサリアムはもう一段上昇する余地があるとみる。いまは買い勢力が戻り始めた初期局面であり、現物市場とETF資金がどこまで追い風になるかが焦点だ。
- XRP

XRPは足元でETFへの資金流入拡大を手掛かりに反発した。ただ、なお完全な上放れシグナルとみるには早いとの評価が出ている。6月10日午前時点では、コインマーケットキャップで1.34ドル近辺で推移している。
今回の反発で最も注目されるのは、ETF資金流入の反転だ。コインシェアーズ(CoinShares)の資料によると、6月8日時点の直近24時間の投資商品への資金流入額では、XRPがビットコインとイーサリアムを上回って首位だった。コインシェアーズのリサーチ責任者、ジェームズ・バターフィル氏は、制度圏投資家の選好が特定資産に集中していることを示す事例だと分析した。
実際、ETFの資金フローも改善した。SoSoValueによると、6月8日の米XRP現物ETFには約332万ドルが純流入した。前週は約356万ドルの純流出だったが、流れは再びプラスに転じた。機関投資家の資金が再流入し始めた兆しといえる。

個人投資家のセンチメントにも持ち直しの兆しがある。Coinglass基準のXRP先物未決済建玉は、前日の23億8000万ドルから25億ドル規模まで増えた。個人投資家のレバレッジエクスポージャーが拡大していることを示し、リスク選好が徐々に戻っているサインと解釈できる。クジラの動きにも変化がみられる。CryptoQuantの寄稿者アラブチェーンによると、6月7日時点でバイナンスに流入するクジラの1日当たり数量は今年最低水準まで減った。1日平均で約1260万XRPと、過去に数億XRP単位の流入が見られた時期と比べるとかなり低い。通常、取引所流入の減少は売り圧力の緩和を意味するため、足元の短期的な下押し圧力を和らげる材料と受け止められている。
ただ、地政学リスクから完全に自由というわけではない。コインデスクは、中東紛争の当事者が数日以内に追加合意に達しなければ、原油高が再び進み、暗号資産市場全体に改めて圧力をかける可能性があると指摘した。XRPも市場全体の地合いから完全に切り離されて動くのは難しい。
イシューコイン
- ソラナ(SOL)

ソラナは主要な抵抗線の上抜けに失敗した後、83ドル近辺で推移している。6月10日午前時点で、コインマーケットキャップでは82.9ドル前後で取引されている。
市場では、機関需要の鈍化とアップグレード遅延が短期的な重荷になっている。目を引くのはETFからの資金流出だ。SoSoValueによると、6月7日のソラナ現物ETFでは1540万ドルの純流出が発生した。上場後で最大の日次流出額となる。続く6月8日にも約192万ドルが追加で純流出した。過去最大規模の流出直後にも資金離れが続いたことで、投資家心理の弱さが意識されている。
技術的な期待を集めていたアップグレード日程の延期も重しだ。ソラナ財団が進めていたアルペングロー(Alpenglow)アップグレードは、もともと今年1~3月の重要イベントとして期待されていたが、2026年4~6月に延期された。ネットワーク処理速度の改善期待が大きかっただけに、投資家にとっては好材料の後ずれを意味する。追加の具体的なロードマップも乏しく、市場は待つより慎重姿勢を強めている。

一方で、中長期的には意味のある動きも出てきた。ソラナ財団はアシメトリック・リサーチ(Asymmetric Research)と協力し、「ストライド(STRIDE)」と呼ぶセキュリティ評価フレームワークを導入した。ソラナ基盤の分散型金融(DeFi)プロトコル全体を対象とする継続型のセキュリティ評価システムである。6月1日に発生したソラナ基盤の分散型デリバティブ取引所(DEX)ドリフト・プロトコルのハッキングは、ソラナDeFiエコシステム全体の信認を揺るがすきっかけとなり、実際に価格の重荷になったとみられる。ソラナ財団もこれを受け、比較的速やかに対応策を打ち出した。
従来のスマートコントラクト監査は、特定時点でしか有効でないことが多かった。これに対しストライドは、プロトコル更新や攻撃環境の変化まで反映しながら、セキュリティ格付けを継続的に見直す仕組みだ。運用セキュリティ、アクセス制御、マルチシグ設定、ガバナンス脆弱性など8項目で評価し、結果は公開リポジトリーに掲載する。利用者や投資家にとっては、現時点で各プロトコルがどの程度のリスクを抱えているかを、より明確に判断できるようになる。
結局、ソラナは短期的にETF資金流出とアップグレード延期という重荷を抱える。その一方で、財団によるセキュリティ体制の強化が、実際にエコシステムへの信認回復につながるかが今後の焦点となる。

Suehyeon Lee
shlee@bloomingbit.ioI'm reporter Suehyeon Lee, your Web3 Moderator.





