
ジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、ケビン・ウォッシュ次期議長候補が5月に就任した後もFRBに残り、理事を続ける意向を表明した。6月から連邦公開市場委員会(FOMC)を主宰する見通しのウォッシュ氏は、パウエル前議長と並んで政策金利を協議する異例の局面に入る。FOMCはこの日、政策金利を据え置いたが、一部委員は将来の利下げ余地をにじませる声明文に反対し、タカ派姿勢を鮮明にした。市場は米国債利回りの上昇要因と受け止めた。
パウエル議長は4月29日(現地時間)の記者会見で「きょうが議長として最後の記者会見になる」と述べ、ウォッシュ議長候補を祝福した。これに先立ち、ウォッシュ氏の承認案は上院銀行委員会を通過した。パウエル氏の議長任期は5月15日に終わる。議会はそれまでに本会議を開き、ウォッシュ氏の承認案を可決する見通しだ。
ただ、パウエル氏はFRBに対する一連の「違法な攻撃」に懸念を示し、理事職は続ける考えを明らかにした。理事としての残る任期は2028年1月まである。政治的要素を考慮せず金融政策を決める能力が脅かされていると指摘し、自身が去る時期については「適切だと判断する時だ」と語った。
FRB議長は、理事としての任期が残っていても、議長職の終了とともに退任するのが慣例だった。ポール・ボルカー氏、ベン・バーナンキ氏、ジャネット・イエレン氏はいずれも議長任期の満了日に理事職も辞した。アラン・グリーンスパン氏は議長と理事の任期が同時に切れた。任期を残した議長が政権との対立のなかでとどまった前例をさかのぼると、1950年代初めのマリナー・エクルズ元議長まで行き着く。
スコット・ベッセント米財務長官はXへの投稿で、制度重視を掲げてきた人物が残留を決めたのは「伝統に真っ向から反する」と批判した。トランプ大統領は、パウエル氏は「ほかの仕事が見つからないから」残るのだとやゆした。
FOMCはこの日、政策金利を年3.5〜3.75%で据え置くことを決めた。2025年に3回の利下げを実施したFRBは、2026年に入って3会合連続で現状維持を選んだ。イランとの戦争を背景に、原油を中心とするインフレ圧力への警戒が強まっているためだ。
もっとも、今回のFOMC声明には12人の委員のうち4人が反対した。1回の会合で4人の反対票が出たのは1992年以来、34年ぶりである。
トランプ大統領が2025年に任命したスティーブン・ミラン理事は0.25ポイントの利下げを主張した。一方、ニール・カシュカリ氏、ベス・ハマック氏、ロリー・ローガン氏の3人は、声明文に盛り込まれた「目標達成を妨げるリスク要因が生じた場合、金融政策のスタンスを適切な水準に調整する用意がある」との文言が金融緩和姿勢を示唆するとして反対した。イランとの戦争による衝撃が見込まれるなかで、利下げ基調を維持するシグナルを送るのは不適切だという判断だ。
ボブ・ミシェルJPモルガン・アセット・マネジメント最高投資責任者(CIO)は、この「タカ派トリオ」の登場をウォッシュ議長候補へのメッセージと読み解いた。ブルームバーグ通信に対し、「委員らは『我々は反対票を投じることもある。備えておくべきだ』と言っている」と説明した。
次期議長が解くべき課題は山積している。最大の焦点は、トランプ大統領の支持を受けて議長に就くウォッシュ氏が、大統領の要求にどう向き合うかにある。
英誌エコノミストは、インフレ率が目標の2%を5年間上回るなかで、大統領が継続的に利下げを求めている現状は、FRBが50年で最大の危機に直面していることを意味すると評した。1970年代には、アーサー・バーンズ元議長がリチャード・ニクソン大統領の圧力で金利を下げ、物価急騰を招いた経緯がある。その後、ジミー・カーター大統領が任命したボルカー議長が大幅利上げに踏み切り、インフレを抑え込んだ。「50年」という表現は、1970年代以降FRBが守ってきた独立性が再び試されていることを示す。市場のFRBと米国債に対する信認に直結する問題でもある。
議長になっても、FOMCで行使できる票は1票にすぎない。議長の力は、異なる性向の委員を説得し、意思決定をまとめる点にある。ウォッシュ次期議長が委員間の分断をどこまで修復できるかが焦点になる。
ジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、5月15日をもって8年に及ぶ議長職を退く。
2012年にバラク・オバマ元大統領がFRB理事に任命したパウエル氏は、ドナルド・トランプ大統領の第1次政権下の2018年2月にFRB議長に就いた。その後、ジョー・バイデン前大統領が再任した。
「パウエル時代」を特徴づけるキーワードは、コロナ禍と中央銀行の独立性の2つだ。トランプ大統領は第1次政権でも、自ら指名したパウエル議長が利下げに応じないと不満を示していたが、パウエル氏はこれに従わず高い金利水準を維持した。
突然の新型コロナウイルス禍による供給網の混乱と物価急騰は、パウエル氏が直面した最大の危機だった。2020年3月にパンデミックが本格化すると、FRBは金利を速やかにゼロ水準まで引き下げ、流動性供給を急拡大した。
ただ、2021年にインフレが始まった際、これを「一時的」と判断したことが失策につながった。利上げ開始が遅れたためだ。2022年6月の米インフレ率は9.1%まで上昇したが、その年の3月に引き上げ始めた政策金利は1.5〜1.75%にとどまっていた。
その後、FRBは2024年まで段階的に金利を5.25〜5.5%まで引き上げた。ただ、「動き出しが遅すぎた」との批判は長く付きまとった。一方、在任中に失業率は4%未満の低水準を維持し、低賃金労働者の実質賃金が上昇した点は成果と評価されている。
トランプ第2次政権では、中央銀行の独立性を守る「闘士」としてのイメージが強まった。FRB本部の改修工事で費用が膨らんだことを問題視し、司法省が同氏への捜査に着手したことで、この印象はいっそう固まった。2026年1月には、抵抗の意思を示す動画を公開したこともある。
ワシントン=イ・サンウン特派員 selee@hankyung.com

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