概要
- 米国は、ホルムズ海峡で足止めされた船舶の通航を支援するプロジェクト・フリーダムを開始し、緊張が高まるなかで国際原油相場の安定化を本格化させると明らかにした。
- イランは米国の通航支援に軍事手段で対抗すると反発し、タンカー被弾などで海峡の統制権を誇示した。これを受け、保安リスク等級は「深刻」に維持されていると伝えた。
- プロジェクト・フリーダムは、膠着する終戦交渉で優位を確保するためのカードと受け止められているが、イランが抵抗すれば停戦崩壊や米軍の人的被害、作戦の実効性不足への懸念が強まっている。
期間別予測トレンドレポート


「ホルムズ海峡の船舶救出作戦を開始」
「海峡に閉じ込められた船を脱出させる」
イランは「停戦合意違反」と反発、緊張高まる

ドナルド・トランプ米大統領は5月4日、中東時間の同日午前にホルムズ海峡で足止めされた第三国の船舶が安全に離脱できるよう支援する作戦を始めると発表した。原油輸送を妨げて国際原油相場を押し上げているイランのホルムズ海峡封鎖を無力化する狙いがある。イランは「停戦合意違反だ」と反発した。
トランプ大統領は5月3日、SNSに「多くの船で食料などあらゆる物資が不足している」と投稿し、「船舶の移動は、何の落ち度もない人々や企業、国家を解放するためのものだ」と説明した。作戦名は「自由」「解放」を意味する「プロジェクト・フリーダム」とした。
もっとも、3月に試みた前回と同様、米軍艦などがタンカーを直接護衛する形にはならない見通しだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は米政府高官の話として、複数の国や保険会社、海運会社が作戦に加わり、海峡を通る船舶の航行を円滑にすると報じた。米海軍艦艇が通航船舶を護衛する内容は含まれないという。
イランは受け入れられないとの立場だ。作戦発表後、海峡近くではタンカー1隻が正体不明の飛翔体による攻撃を受けた。
米、救出作戦公表直後に「ホルムズでタンカー被弾」
核合意を巡る対立で交渉膠着 米、国際原油相場安定へ勝負手
ホルムズ海峡は、今回の戦争でイランが握る唯一の「てこ」だ。防空網が崩れ、1万回を超える空爆を受けるなかでも、海峡を封鎖して原油価格の急騰を招き、米国と同盟国を圧迫してきた。トランプ大統領が通航再開を打ち出しただけで、イランがそれを容認するとは考えにくい。「プロジェクト・フリーダム」表明の直後に、ホルムズ海峡近くでタンカー1隻が攻撃を受けた。
このため、トランプ大統領の発表の裏には、イランの出方を見据えた高度な駆け引きがあるとみる向きがある。一方で、停戦局面を覆しかねない無理筋だとの懸念も強まっている。
◇ イランは強く反発
5月4日、イラン軍は米国によるホルムズ海峡の通航支援に対抗し、軍事手段を動員すると表明した。同日の声明で「われわれはホルムズ海峡の安全を完全かつ強力に維持している」と強調した。あわせて、イラン軍との調整を欠いた移動で安全を脅かさないよう、民間船舶やタンカーに警告した。
同日に起きたタンカー攻撃は、海峡の統制権を維持するというイランの武力誇示の色彩が濃い。このタンカーが実際に海峡通過を試みていたかどうかは明らかになっていない。トランプ大統領の発表後も、英国海事貿易機関はこの攻撃を理由に、ホルムズ海峡内の保安リスク等級を「深刻」に据え置いた。
航行再開に向けて米国がどの手段を使うのかはなお明確でない。米軍は把握した機雷情報を船舶に伝えるなど、安全な航路の特定を支援する案を念頭に置いているとされる。
ただ、船舶に対するイランの攻撃を前提にした反撃計画は用意しているもようだ。トランプ大統領はSNSに「妨害があれば、残念ながら強力に対処せざるを得ない」と記した。米中央軍は、プロジェクト・フリーダムに誘導ミサイル搭載の駆逐艦、陸上・海上配備の航空機100機超、無人プラットフォーム、兵力1万5000人を投入すると明らかにした。
◇ イランの力をそぎ、終戦交渉を促す狙いか
作戦実施の背景を巡っては、さまざまな見方がある。なかでも有力なのは、膠着した終戦交渉の突破口を開くための「ショック療法」だとする解釈だ。
米国とイランは4月7日に停戦で合意し、終戦交渉に入ったが、いまも結論は出ていない。核を巡る隔たりが埋まっていないためだ。先週末にかけてイランは、経済制裁の緩和を条件に核交渉に応じる新たな案を示したが、トランプ大統領は受け入れなかった。
その提案を拒否した直後に米国がプロジェクト・フリーダムを公表したことから、交渉を有利に進めるためのカードと受け止める向きが多い。タンカーが海峡を抜ければ、国際原油相場を安定させると同時に、イランが持つ圧力手段を一部そぐ効果を狙ったとの見方だ。
もっとも、イランが本格的に抵抗すれば、現在の停戦は崩壊の危機に陥る可能性が高い。米軍の戦力は圧倒的だが、イランもドローンや通常型ミサイルで攻撃できるためだ。この場合、米軍にも人的被害が出る可能性は低くないとニューヨーク・タイムズ(NYT)などは分析した。
そもそも作戦発表そのものが無理だったとの批判も相次ぐ。空母ジェラルド・フォードが中東海域を離れるなど、米国は商船の通航を守り切れるだけの軍事力を備えていないためだ。欧州など他国との連携が必要な局面だが、トランプ大統領が最近、ドイツ駐留米軍の一部撤収を発表したこともあり、それも容易ではない。
作戦の実効性自体は大きくないとの観測もある。なお標的になる恐れが残るなかで、その危険を引き受ける船主を見つけにくいためだ。世界的な船舶管理会社アングロ・イースタンのビョルン・ホイガード会長は5月4日、CNNのインタビューで「安全な航路を確保するには一方ではなく双方の協力が必要だ」と語った。「イランがこれを受け入れない限り、海上の状況は実質的に変わらない」とも話した。
ファン・ジョンス/ハン・ミョンヒョン記者 hjs@hankyung.com

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