トランプはなぜイランを攻撃したのか…体制転換・石油覇権への「野心」【イ・サンウンのワシントン・ナウ】

出典
Korea Economic Daily

概要

  • 米国がイランを攻撃した背景には、イランの核能力の遮断、体制転換エネルギー覇権の確保という目的が複合的に作用したとした。
  • 今回の攻撃により米国はイラン産原油への影響力を拡大し、OPECを上回る市場影響力を確保し得るとの分析が出たと伝えた。
  • イラン産原油の輸入比率が高い中国は打撃を受ける一方、ロシア産原油の輸出増加の可能性が取り沙汰されるなど、エネルギー市場の再編が見込まれると伝えた。

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【米国のイラン攻撃】

Photo=Shutterstock
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ドナルド・トランプ米大統領が電撃的にイスラエルと共にイランを攻撃する決断を下したことについて、トランプ第2期政権に入って「最大の外交政策上の賭け(ロイター)」との評価が出ている。こうした決断の背景には複数の目標が複合的に作用したとみられる。イランが核能力を保有する可能性を完全に遮断すること、体制を転換して中東地域における米国の影響力を大幅に強化すること、石油などエネルギー覇権争いで優位に立つこと、などだ。さらに、イラン産石油を大半輸入する中国をけん制する効果まで狙ったとの分析もある。

(1) 「差し迫った脅威」はあったのか

トランプ大統領はイラン攻撃後に公開した映像で、イラン攻撃の直接の理由について、イランが「核の野望を放棄するあらゆる機会を拒否」し、「核計画を再建し、長距離ミサイル開発を続けようとしたため」だと述べた。

具体的な証拠は示さなかったものの、イランのミサイルが「欧州、同盟国、海外駐留の米軍を脅かし得るうえ、まもなく米国本土にも到達し得る」として、「この体制が核兵器を保有すればどれほど大胆になるか想像してみよ」と語った。こうした評価どおりだとすれば、昨年6月にイラン国内3カ所の核施設を破壊しただけでは、イランの核能力は本質的に損なわれていなかったという意味になる。

米国は昨年からイランと8回にわたり核協議を行った。トランプ大統領が2018年に自ら離脱した包括的共同作業計画(JCPOA)とかなり似た結果になると予測する向きが多かった。イラン側がトランプ政権に大きな事業上の利益を提案することもあり、先月26日には「相当な進展(オマーン外相)」があったとの評価も出た。しかしイランが核能力の完全放棄を約束せず、米国側もイラン首脳部の排除なしには達成が難しいと判断し、攻撃を決断したと解釈される。

(2) 体制転換は可能か

アヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者をはじめ、これまで数十年にわたり鉄拳統治を続けてきたイラン首脳部の大半が今回の攻撃で死亡したため、イラン国内の政治地図が大きく変わるのは明白だ。

米国は体制転換を望んでいる。トランプ大統領は軍事行動終結後、イラン国民に対し「自分たちの政府を掌握せよ」と促した。米国が直接乗り出して体制を「変えて」やるわけではないが、今年1月の大規模反政府デモの火種が再燃すれば親米政権の樹立につながるとの期待が反映されている。

容易ではない。2010年代初頭の「アラブの春」以降、この地域では親米の民主政権ではなく神権国家が相次いで成立した。イランは単一民族ではなく、ペルシャ人、アゼルバイジャン人、クルド人など多様な民族・文化的背景が混在し、反政府デモ時にも求心力が形成されにくかった。どの勢力が主導権を握るかは予断を許さない。

プリンストン大学公共・国際問題大学院の中東政策学教授ダニエル・カーツァー氏は空爆前のインタビューで、「政権の目標が体制転換なら、空爆だけではイスラム共和国が崩壊しないことを理解しなければならない」とし、トランプ政権は初期攻撃後に引くのか、(体制転換のために)より大きな戦争を追求するのか決める必要があると指摘した。

28日(現地時間)の空爆で破壊されたアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の潜伏先の航空写真。/エアバス
28日(現地時間)の空爆で破壊されたアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の潜伏先の航空写真。/エアバス

(3) エネルギー覇権で優位に

世界的なエネルギー覇権を追求するトランプ政権は、今回の攻撃でイラン産原油に一定の影響力を持つ可能性がある。ベネズエラ産原油のように、直接すべてを無期限に統制するとまではいかなくとも、今後イランで政治的主導権を握る勢力は、原油問題で米国の影響力を受け入れる形で妥協する余地が大きい。

この場合、すでに世界最大の産油国である米国は、世界最大の石油埋蔵量を持つベネズエラに続き、中東地域の原油生産にも関与することになる。石油輸出国機構(OPEC)をはるかに上回る市場への影響力を手にすることになる。

(4) 中国・ロシアへの影響は

米国がイラン攻撃で得られる確実な効果の一つは、中国へのけん制だ。イランは日量310万バレルの原油を生産し、このうち国内消費後に残る130万バレルを中国に輸出する経済構造を持つ。トランプ大統領は昨年の就任直後、イランに対する最高水準の経済制裁を決定し、イラン産原油を輸入する国に追加で25%の関税を課すと脅したが、中国を相手に実行には至らなかった。

経済制裁下のイラン産原油を買い付けて生産コストを下げてきた中国は、一定の打撃を受けた。中国の原油輸入量(日量平均1027万バレル)に占めるイラン産の比率は13%に達する。

中国は公式に米国を非難するメッセージは出していない。傅聡・国連駐在中国大使が「イランと域内諸国の主権・安全保障・領土保全は必ず尊重されなければならない」とし、「軍事行動を直ちに停止し、対話と交渉に戻るべきだ」と述べるにとどまった。

ロシアもウラジーミル・プーチン大統領が直接米国を批判はしなかった。ただ、ドミトリー・メドベージェフ前大統領(国家安全保障会議副議長)が「トランプ大統領の本性が露呈した」として強く非難した。

原油問題でロシアの立場は中国と異なる。中国がイラン産原油を輸入できなくなる分、ロシア産原油を消費する可能性が生じるためだ。

(5) 長期戦の可能性は

イランが大規模な報復を宣言し、ドバイ空港をはじめ近隣国への攻撃を相次いで行っている状況を収拾するため、米国が追加攻撃を継続する可能性はある。トランプ大統領は「中東全域、さらには世界全体に平和をもたらすという目標を達成するまで、今週いっぱい、あるいは必要な期間にわたり、中断なく強力かつ精密な爆撃を続ける」と述べた。イラン政権の代理勢力であるイエメンのフーシ派反政府勢力などがホルムズ海峡封鎖のため船舶攻撃を始めたことから、米軍が海峡封鎖解除の作戦に乗り出す可能性もある。

しかし、大規模な追加攻撃や地上戦まで踏み込む全面戦争に発展する可能性は高くないというのが、大多数の専門家の共通した見方だ。イラクとアフガニスタンでの失敗経験が大きい上、トランプ大統領の中核支持層である「米国を再び偉大に(MAGA)」勢力内の不満が高まれば、中間選挙にも影響し得るためだ。

ワシントン=イ・サンウン特派員 selee@hankyung.com

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