概要
- MS・グーグルなどAIビッグテックが、SKハイニックス・サムスン電子とDラム長期供給契約を推進し、物量の先行確保に乗り出した。
- 深刻化するメモリー供給不足とDラム・NANDフラッシュ価格の急騰を受け、ノートPCやスマートフォンなどIT製品の販売価格が一斉に上昇している。
- サムスン電子はHBM・Dラム設備投資の拡大とあわせ、2030年の1ナノ工程とシリコンフォトニクスのロードマップを示し、TSMCとの技術競争に乗り出している。
期間別予測トレンドレポート


供給逼迫で長期契約を要求
データセンターなどインフラ競争が激化
メモリー不足を懸念し物量を優先確保
ノートPC・スマートフォン業界にも値上げ波及

SKハイニックスが、マイクロソフト(MS)やグーグルなど世界の人工知能(AI)大手とDラムの長期供給契約(LTA)を結ぶ。価格変動の大きいDラムを、ビッグテックが長期で先回りして確保する動きだ。
世界的なAIインフラ投資の拡大で、Dラムの供給不足懸念が強まっている。データセンターの中核部品であるメモリーを安定確保するため、ビッグテックが長期供給契約を求めたとみられる。この余波はノートPCやスマートフォンにも広がっており、製品価格を引き上げる動きが強まっている。世界のDラム大手であるサムスン電子とSKハイニックスは、需給逼迫に対応するため設備投資を拡大している。
◇MSとグーグル、Dラム長期契約を打診
業界によると、SKハイニックスはMSとDDR5の長期供給契約に向けて最終調整を進めている。今年から5年間適用する契約で、規模は数十兆ウォンに達する見通しだ。
契約期間中にDラム単価が大きく下落した場合に備えて最低価格を設ける案や、契約総額の10〜30%を前払いする条件などを協議しているもようだ。
SKハイニックスはグーグルとも長期供給契約の締結に向けて協議している。主力の高帯域幅メモリー(HBM)に加え、サーバー向けの汎用Dラム供給も議論しているという。
MSとグーグルは、サムスン電子ともメモリー長期供給契約を推進している。サムスン電子、SKハイニックスに次ぐ世界3位のDラムメーカーである米マイクロン・テクノロジーも先月、同様の契約を結んだ。
◇「価格より物量確保が重要」
長期供給契約は、長期間にわたり物量と価格をあらかじめ定めて取引する方式だ。特定製品の価格が急騰したり、供給が不足したりする局面で活用される。
これまでMSやグーグルのような大手企業は、メモリーメーカーと年単位の供給契約を結んでこなかった。メモリーは市況の影響を受けやすく、価格変動が大きい製品とされてきたためだ。
それでもビッグテックが最近、サムスン電子やSKハイニックスに相次いで長期契約を提案したのは、メモリー不足が深刻化しているためだ。世界各地でAIインフラ投資が広がり、メモリー供給が大幅に足りなくなっている。価格も急騰している。DRAMeXchangeによると、昨年3月に1.35ドルだったDDR4の固定取引価格は、先月末に13ドルまで跳ね上がった。
AIインフラの覇権争いが長期化するとみて、AI企業がまず物量確保を優先する戦略に転じたとの分析もある。半導体業界の高位関係者は「今は価格が問題ではない。Dラムそのものを確保しにくい状況だ」と説明した。
◇ノートPC・スマホ価格も急騰
AI産業が引き起こしたメモリー不足は、消費者向け製品にも広がっている。サムスン電子のモバイル・エクスペリエンス(MX)事業部は3月7日を機に、PCやタブレットなど主力製品を値上げした。
ノートPCのギャラクシーブック6シリーズの出荷価格は、発売から1週間で仕様ごとに17万〜88万ウォン上がった。最上位機種のギャラクシーブック6ウルトラは最大90万ウォン上昇し、583万ウォンに跳ね上がった。タブレットのギャラクシータブS10・S11シリーズは15万ウォン、ギャラクシータブFEは8万ウォンそれぞれ上がった。
スマートフォンも例外ではない。昨年発売したギャラクシーS25エッジとギャラクシーZフォールド7、ギャラクシーZフリップ7の価格も、それぞれ9万〜19万ウォン引き上げられた。
内外の他社も事情は似ている。LG電子は今年初めに発売したLGグラムプロAI 2026の価格を314万ウォンから最近は354万ウォンへ13%引き上げた。レノボは30%以上、ASUSも15〜25%値上げした。米HPとデルも今年4〜6月期の大幅な値上げを公式化した。
こうした値上げは、DラムやNANDフラッシュなどメモリー半導体の供給不足が背景にある。AIブームを受けて、メモリーメーカーがHBMなど高付加価値製品の生産に集中し、汎用メモリーの供給を減らしたためだ。汎用Dラム(DDR4 8Gb 1G×8)の価格は1年で9倍超に上がり、NANDフラッシュも2倍超に上昇した。
ノートPCの製造原価に占めるメモリー比率は最近25〜30%に達し、中核部品である中央演算処理装置(CPU)や画像処理半導体(GPU)に匹敵する水準となった。一部メーカーは価格を据え置く代わりにメモリー容量を減らして対応しているが、原価圧力を完全に相殺するには力不足だというのが業界の共通した説明だ。
◇サムスン・SK、Dラム設備投資を大幅拡大
サムスン電子とSKハイニックスは、こうした環境を踏まえ今年のDラム設備投資を積極化する方針だ。サムスン電子は主力Dラム生産拠点である京畿道・平沢キャンパスで、HBM4に使う10ナノ級第6世代(1c)Dラムの増産に力を入れている。華城キャンパスでは、SOCAMMや汎用Dラムモジュールの材料となる10ナノ級第5世代Dラム(1b)への工程転換を急いでいる。
SKハイニックスは、忠清北道・清州の新たな生産拠点M15Xを中心にHBMの新規需要に対応している。本社のある京畿道・利川キャンパスでも、最先端製品である1c Dラムへの工程転換を進めている。
Dラム供給難を受け、両社の今年1〜3月期業績は過去最高となる見通しだ。サムスン電子の1〜3月期売上高は133兆ウォン、営業利益は57兆2000億ウォンで暫定集計された。営業利益は、1〜3月期としての従来最高だった2022年の14兆1200億ウォンの3倍を上回る水準だ。
証券業界では、SKハイニックスの1〜3月期売上高を46兆6252億ウォン、営業利益を31兆5627億ウォンと見込む。営業利益は前年同期の7兆4405億ウォンの4.2倍となる見通しだ。
メモリーで先行するサムスン、ファウンドリーでは「夢の1ナノ」導入へ
TSMCと次世代半導体の主導権争い 2ナノでも改良工程を多様化
メモリー事業で好調なサムスン電子が、ファウンドリー(半導体受託生産)でも革新工程の準備を進めている。2030年に1ナノメートルの工程を導入する目標を掲げた。1ナノ技術は、原子5個分の大きさの演算素子を新たな方法で配置する「夢の半導体」工程と呼ばれる。
ライバルのTSMCと本格的な技術競争を繰り広げ、次世代半導体市場の主導権を握る狙いだ。サムスン電子は、現行の最先端である2ナノ技術でも大型顧客の開拓に向けて多様な工程を開発する方針だ。
◇フォークシート導入で微細化を狙う
業界によると、サムスン電子ファウンドリー事業部は2030年までに1ナノ工程の研究開発(R&D)を終え、量産ラインへ移管する計画を立てた。1ナノ技術は夢の革新工程とされる。半導体チップ内でデータ処理を担う素子の幅を1ナノまで縮小できることを意味するためだ。現在の最先端である2ナノ技術より素子幅が半分に狭まるため、工程難度は一段と高い。
1ナノ工程では、素子の縮小とともに「フォークシート(fork sheet)」と呼ぶ新構造も導入する。2ナノ工程まではゲート・オール・アラウンド(GAA)技術で素子をつくってきた。電流が流れる経路を従来の3面から4面へ増やし、電力効率を極大化した構造だ。
このGAA素子間の距離を極限まで縮める技術がフォークシートだ。GAA素子の間に、まるでフォークを差し込むように電気を通さない壁を立てる。たとえば家と家の間に芝生を置いていた従来構造を、巨大なコンクリート壁に置き換えるイメージだ。芝生をなくした分だけ余剰空間が生まれ、同じ面積により多くの家を建てられるように、同じチップ面積により多くの素子を配置できる。
◇首位TSMCを正面から追う
サムスン電子ファウンドリー事業部は世界市場2位だ。だが、約70%のシェアを握るTSMCと比べると、規模は10分の1程度にとどまる。TSMCも2030年以降の1ナノ工程でフォークシートの導入を進めるとされる。業界専門家は、サムスン電子が2030年の1ナノ工程ロードマップまで定め、TSMCと対等な技術競争に備え始めたと評価する。
サムスン電子は2019年に「2030年システム半導体1位ビジョン」を発表して以降、先端工程ではTSMCを追う戦略を維持してきた。2019年には世界で初めて7ナノの極端紫外線(EUV)露光工程を導入し、2022年には世界で初めて3ナノ工程でGAA素子を採用した。
業界関係者は「売上高や生産規模でサムスン電子がTSMCを上回るのは現実的に容易ではないが、技術面では競争を続けている」と指摘した。昨年、テスラから165億ドル規模の2ナノAIチップ供給契約を獲得したのは、その技術力を示す代表例だという。
◇2ナノ先端工程も多様化を加速
サムスン電子ファウンドリー事業部は、現時点で最先端の2ナノ技術でも改良工程の多様化を進めている。テスラの2ナノチップ「AI6」の量産に向け、専用工程「SF2T」を開発中だ。このチップは2027年から、サムスン電子の新たなファウンドリー拠点である米テイラー工場で生産する。
サムスン電子のシステムLSI事業部による新型スマートフォン向けアプリケーションプロセッサー(AP)の生産を目的に、今年から使う新たな2ナノ工程「SF2P」や、来年に稼働する「SF2P+」の開発にも拍車をかけている。半導体業界関係者は「2ナノ工程の歩留まりは60%を超え、生産性が改善している。今年の黒字転換期待も大きい」と話した。
また、サムスン電子ファウンドリー事業部は先月、米国で開かれたOFC 2026で、シリコンフォトニクスを2028年から量産するロードマップを公表した。シリコンフォトニクスは電気ではなく光でデータをやり取りする技術だ。銅配線でデータを伝送する現行方式に比べ、速度は飛躍的に高まる。サムスン電子はシリコンフォトニクスにHBM、システム半導体ファウンドリー、パッケージングを組み合わせた「ターンキー」戦略で、TSMC追撃を加速する構えだ。
カン・ヘリョン/キム・チェヨン記者 hr.kang@hankyung.com

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