【ワシントン特派員コラム】パウエル氏が拍手を受けた理由

出典
Korea Economic Daily

概要

  • 市場は、中央銀行の独立性が損なわれれば ドルの価値米国債の価値 が大きく揺らぐとみている。
  • 中間選挙を前に低金利要求が強まるなか、ウォーシュ議長候補 は独立性を守ると繰り返し誓った。
  • 6月の FOMC でウォーシュ氏が十分に タカ派の姿勢 を示さなければ、市場は同氏を 第2のスティーブン・ミラン とみなす可能性がある。

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イ・サンウン ワシントン特派員

写真:Shutterstock
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「次は皆さんと、ここで会うことはないだろう」

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見を終えると、米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、いつものように眼鏡を外してポケットに差し込み、会見場を後にした。出口へ向かう背中に向けて、数人の記者がまばらに拍手を送った。熱狂的というよりは控えめで、ためらいも交じっていた。

そもそも記者は拍手をする存在ではない。まして中央銀行トップが拍手を受けて会見場を去るのは珍しい。ベン・バーナンキ氏やジャネット・イエレン氏は、ただ静かに会見場を後にした。

中央銀行の独立性を支持

では、パウエル氏の金融政策はバーナンキ氏やイエレン氏より優れていたのか。そう考える人は多くない。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)で長く金融政策を担当したジョン・ヒルゼンラス氏は、米誌フォーチュンへの寄稿で、パウエル氏が自らの職責に忠実であろうとした姿勢は評価しつつ、政策自体には高い点を付けられないと論じた。世界金融危機時に理事を務めたパウエル氏が、需要ショックだった金融危機への対応を、供給ショックだった新型コロナウイルス禍にそのまま当てはめた点を失策に挙げた。

資金供給の拡大にはプラスの面もあったが、副作用も伴った。インフレは一時的だとしたパウエル氏の失言は、2021年8月のジャクソンホール講演で表面化した。背景には、供給網の混乱の性格や物価上昇の経路について、当初の判断を誤った可能性が大きい。

しかもパウエル氏は、本当に去るわけでもない。歴代議長のように議長任期の終了とともに理事職を退くのではなく、後任議長のケビン・ウォーシュ氏との「不快な同居」を選んだ。記者たちの拍手も、パウエル氏の政策が際立って優れていたとか、これまでの労をねぎらう意味ではない。パウエル氏が守ろうとしている中央銀行の独立性への支持を示したものだ。

ウォーシュ氏、焦点は「距離感」

次期議長に課される課題は、パウエル時代よりはるかに複雑だ。1972年、再選を控えたリチャード・ニクソン大統領は、当時のFRB議長アーサー・バーンズ氏に利下げを求めた。バーンズ氏の個人的信念に、オイルショックと政治的圧力が重なって拡張的な金融政策が続き、結果は惨憺たるものだった。6%台だった物価上昇率は12%超に跳ね上がり、後任のポール・ボルカー議長は政策金利を年20%まで引き上げざるを得なかった。

市場はバーンズ時代の再現を警戒する。経済指標は悪くなく、物価も上昇基調にある。それでも中間選挙を前に票を意識するなら、低金利の方が都合がよい。ドナルド・トランプ大統領の代理人は、スティーブン・ミラン理事1人で足りる。議長までが代理人の役割を果たし得るとのシグナルを市場が受け取った瞬間、ドルの価値と米国債の価値は大きく揺らぐだろう。ウォーシュ議長候補が上院公聴会で中央銀行の独立性を守ると繰り返し誓ったのも、その危うさを理解しているからだ。

イラン戦争の余波がより鮮明に表れる6月のFOMCで、ウォーシュ氏が十分にタカ派の姿勢を示せなければ、市場は同氏を「第2のスティーブン・ミラン」とみなすだろう。

経済政策も金融政策も、判断を誤ることはある。だが、中央銀行の独立性を守る局面で手遅れは許されない。それは米国というシステム全体への不信につながりかねないからだ。「ウォーシュ議長」は最後の記者会見で拍手を受けるのだろうか。

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